ヘリウムガスとは 産業、工業で多様な用途

ヘリウムガスとは日常生活においても時々耳にする言葉かもしれません。風船の中に入っていて風船をふわふわと浮かべる気体、口から吸ったときに声が高くなると言うイメージを持っている人も多いはずです。

このようなヘリウムとはどのような特徴があるのか、またどのような用途に使われているのかを把握してみると良いでしょう。

ヘリウムガスは貴ガス(希ガス)

貴ガス

まず、最初にヘリウムの特徴として挙げられることとしては、貴ガスに含まれることが挙げられます。原子の周期表を見ると1番右側の列にあるヘリウムやネオン、アルゴンなどがこの貴ガスに該当します。貴ガスはどのような特徴があるのかと言うと、反応性が非常に乏しいことが大きな特徴です。他の物質と同じだとしても特に反応することもなく、非常に安定しています。このような安定性から不活性ガスとも呼ばれます。この呼び方は性質をよく表したものであるため、現在でもよく使われているものの、他の元素と化合物を作ることが発見されてからは、適切な呼び名ではなくなったのです。

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しかし特別な条件がなければ化合物を作ることもなく、非常に安定している気体と言えるでしょう。希ガスと書かれることもありますが、こちらの方がなじみがあるかもしれません。以前までは珍しい気体と言う意味から希ガスと呼ばれていたのですが、それほど珍しいものでもないのです。

大気中に含まれている気体のうち1番多いものが窒素、2番目が酸素ですが、その次は貴ガスのアルゴンと呼ばれるものです。このような理由から、特別に珍しい気体でもないのが実情です。ヘリウムガスは貴ガスの中でも1番軽い気体であると言われています。周期表を見ると1番右上に位置していますが、原子番号は2です。原子番号は原子の重さの順番を表していて、つまり2番目に軽い元素と言うことになります。多くの気体は水素や酸素のように2原子分子となっていますが、原子番号の順番だけで気体の重さを決めることができません。しかし気体分子の構造まで加味したとしても、水素に次いで2番目に軽い気体と言うことです。

宇宙全体で見たときに1番多い元素は水素ですが、その割合は76%とされています。そしてヘリウムが水素に次いで2番目に多く、宇宙全体の23%を占めます。

このような特徴のあるヘリウムガスですが、私たちの身近なところで様々な使われ方をしています。まずよく知られているものが風船と言えるでしょう。ヘリウムは2番目に軽い気体にあたり、原子量は約4ということになります。空気の原子量が29になるため、空気よりもはるかに軽い気体であることがわかります。実際に風船が浮かぶことがわかるでしょう。空気より軽い気体がその他にもありますが、なぜヘリウムが使われているのかと言うと、ヘリウムが不活性な気体であるからです。

以前まではヘリウムよりもさらに軽い水素ガスが使われていたこともあったのですが、水素は引火性があり実際に事故が起こったこともあります。さらには膨らんでいる風船は時間が経つにつれて少しずつしぼんでいきます。

風船とヘリウムガスの仕組み

風船をヘリウムと空気で膨らませた際には、ヘリウムで膨らませたものは空気よりも早くしぼみます。これはなぜなのかと言うと、ヘリウムの原子半径が関係しています。実は風船には目では見ることができないのですが、かなり小さな穴が開いているのです。多くの気体分子がこの穴を通り抜けることができるとされています。通り抜けやすいかどうかは気体分子の大きさにも関係しますが、ヘリウムは半径が小さい原子なので、風船の穴を簡単に通り抜けてしまうと言うことです。このようなことから風船はすぐにしぼんでしまうことがわかります。

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そしてお祭りでもよく見かける声を変えるためのヘリウムガスにおいても使われていると言えるでしょう。ヘリウムガスとは空気よりも密度の低い気体にあたり、このようなことから発せられた声が空気中よりも早く体内を伝わることから、通常よりも声が高くなります。これは物理学の範囲で表せられる現象であるため、気になる場合には物理学を勉強してみると良いでしょう。

 

純粋なヘリウムガスを吸った場合には窒息の危険性

ヘリウムを吸ったとしても体には外はありませんが、これは不活性ガスであることが理由です。しかし注意しなければならない事は、ヘリウムガスを吸っても体に害は無いのですが、風船などに使うガスを吸うと死に至る可能性も考えられます。同じヘリウムガスと言う名前で呼ばれているものの、この2つは組織成分が違う期待です。

風船に使われるものは純粋な気体ヘリウムであるケースが多いですが、声を変えるために使われるものは違います。純粋なヘリウムガスを吸った場合には窒息の危険性も考えられるため、十分に注意しましょう。

 

深刻なヘリウム不足

このように身近な気体である事がわかりますが、実際には世界規模で見たときには深刻なヘリウム不足が発生しています。近い将来枯渇することも危惧されているほどであり、ヘリウムの使用量を出来るだけ減らし、代わりになる新しい資源を探すことが今後の課題になっています。

 

産業、工業で多様なヘリウムガスの用途

ヘリウムとは水素と同じように空気より重さが軽く、水素とは異なり引火性のない安全なガスに当たります。ヘリウムガスと聞くと風船に入れるものをイメージする人が多いかもしれません。また人間が口から吸ったときに、面白い声が出ることでも知られています。一般的にはバルーンに入れるガスをヘリウムと呼ぶようにもなっていますが、その他にもヘリウムの用途は多岐に渡ります。

風船に入れるだけではなく、意外にも知られていないかもしれませんが、医療の業界や通信ネットワークなど、私たちの身近なところで暮らしに大いに役立っているのです。ヘリウムガスにはどのような用途があるのか、しっかりと把握しておくことが大切です。

ヘリウムの特徴

そもそもヘリウムの性質として言えることとしては、空気より軽いことがまず第一の特徴です。軽さは最大の特徴であり、なぜこんなにも軽いのかと言うと、非常に分子が小さいことから、液体になるための引力が弱いのです。マイナス269度と言う極めて低い温度まで冷やさなければ液体にはなりません。原子の振動が一番小さくなる絶対0度、マイナス273度に近い超低温であったとしても、液体のままでいられるのは非常に珍しいことです。似たような性質の水素でも、マイナス253度で凍ってしまうのです。軽く分子が小さいこと、そして超低温で液化することが三つの大きな特徴であり、それに加えて味もなく臭いも色もない、そして毒もないと言う性質があることで、ヘリウムガスの用途を多様にしていると言うことです。

医療用MRI診断装置

ヘリウムガスの用途として、まず第一に挙げられるものとしては医療用MRI診断装置が挙げられます。超電導と呼ばれる言葉を聞いたことがある人は多いかもしれませんが、これは金属の抵抗が限りなくゼロに近い状態を指しています。強力な磁場を得るためには、超電導状態を作り出さなければなりませんが、超電導状態を作り出すためには、磁場を絶対0度近くまで冷却させなければなりません。

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医療業界において使われるMRIは、強力な磁場により人間の体内の要素が増加するものです。このMRIの下液体ヘリウムが不可欠であり、装置の中に入っている超電導磁石を冷却し続けるために使われていて、超電導マグネットの冷却剤になっていることがわかります。超電導状態を作り上げるために液体ヘリウムが必要ですが、いずれはMRI向けの液体ヘリウムが入らなくなる可能性もあります。

高温超電導と呼ばれる現象が発見され、近年では実用化に向けて少しずつ研究が進められています。

 

光ファイバーや半導体などの製造

そして光ファイバーや半導体などの製造においてもヘリウムガスが使われています。MRI診断装置や超電導装置においては、液体ヘリウムガスが使われているのですが、気体のヘリウムも産業ガスとして、数多くの用途に使われます。

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その1つに挙げられるものは光ファイバーの製造です。光ファイバーは透明で均一に仕上げなければなりませんが、そのためには原料であるガラスを出来る限り不純物のない状態で焼成させなければなりません。無色で無味、そして無臭で無毒、さらには引火性のないヘリウムガスは、酸素の代わりに充填する気体として燃焼する際に使われることになります。

精密機械の溶接

光ファイバーだけではなく、精密機械を溶接する際にも酸素の代わりに充填にする気体として使われているのです。

コンピューターのハードディスク

そしてコンピューターにおいてもヘリウムは使われています。コンピューターのハードディスクに使われている半導体ですが、この製造プロセスにおいてもヘリウムは採用されています。半導体デバイスは、基盤になるシリコンウェハーの上に様々な熱処理を加えながら作業を進めていきます。その際に次の工程に移る前にウェハーを冷却しなければなりません。ヘリウムはこのウェハーの熱を素早く奪う冷却用ガスとして使われます。近年ではヘリウムを充填したハードディスクも登場してきていますが、空気よりも密度の低いヘリウムを充填することによって、電気の消費量を削減することができます。さらには容量の増加にも成功しているのです。コンピューターの分野においては、ヘリウムの重要性は増加傾向にあると言えるでしょう。

ロケットの発射

そして最後にロケットの発射においても使われているのが実情です。一般的にロケットの発射の推進剤は、液体酸素や液体水素などが採用されているのですが、これらの液体を押し出すものにヘリウムが採用されています。

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風船を膨らませるだけではないヘリウムガス

ヘリウムはマイナス269度で液化し、マイナス253度の液体水素に触れても凍ることなく圧力をかけ続けることが可能です。液体になりにくい性質があるため、液体酸素や液体水素にも溶けることがないため、酸素と水素の純粋な反応を引き出すことができるのです。風船を膨らませるだけではなく、数多くの場面で活躍していることがわかります。

このように優れた能力があることがわかりますが、このようなことを知ることで、宙に浮いている風船がこれまでとは違う見え方をするかもしれません。

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