アルゴンガスとは 様々な用途

アルゴンガスとは元素の1つで番号は18番、元素記号Arで表される重要な役割を担う気体です。

アルゴンの由来

アルゴンはギリシャ語の怠惰、不活性を意味する言葉に由来して名づけられています。また働くを意味する単語を否定する働かないを語源としたり、怠け者を語源とする説もあります。

 

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このガスの発見は1800年代にまで遡り、イギリスの物理学者のレイリー卿が、大気分析を行っている過程で存在に気がつきました。

これは1892年のできごとで、2年後の1894年にスコットランドの化学者、ウィリアム・ラムゼーと共にアルゴンが突き止められました。

レイリー卿がアルゴンガスの存在に気がついたのは、空気から酸素や二酸化炭素などを取り除いて造られた窒素と、酸化窒素から造られた窒素との間に僅かな重さの違いがあったからです。

そして理由を考えて至った結論が、未知の不活性な気体が存在しているというものです。ただ、アルゴンガスの存在に気がついていた人は他にもいたようで、100年前にもイギリスの化学者、ヘンリー・キャヴェンディッシュの名前が挙げられることが多いです。

窒素や酸素の次に多く含まれている

アルゴンガスとは、地球の大気中に含まれているもので、窒素や酸素の次に多く含まれています。つまり、誰にとっても身近にあって身の回りに存在していますが、不活性なので殆ど様々な物質と反応が起こらないので、気がつきにくく気にならないわけです。

地球上に存在するアルゴンガスは、その殆どは質量数が40のアルゴン40です。アルゴン40は地殻に含まれるカリウム40が崩壊したことで生成されたもので、大気中に含まれるアルゴンガスの由来となっています。

ちなみに宇宙はアルゴン36が一番多いとされていますが、これは超新星爆発の際に元素合成で生成されたものです。

大気からアルゴンガスを取り出す方法としては、地表の空気を液体酸素、液体窒素に分類する過程で酸素から分留するやり方があります。

アルゴンガスとは不活性で極めて反応しにくく、化学反応の起こりにくさを特徴としています。元素からして安定性が高いですから、用途もまた不活性性を必要とする場合となります。

産業分野では鋼材の生産や溶接にシリコンの製造においても活用されており、幅広く需要があることから国内でもアルゴンガスが生産されています。

日本国内の生産量は2004年の時点で約2億m3で、重さにすると約40万tです。需要の高さから2005年には工業規格のJISが見直され、純度が高められることになりました。

アルゴンガスとは、酸素や窒素を含めてあらゆるガスに反応しませんから、酸化防止に用いる充填ガスの用途に最適です。

実際に食品の酸化防止目的で活用されていますし、酸素や窒素に近い形で存在しているので、特に酸化の原因となる酸素を追い出す効果が優れます。

知っている人も多いですが、蛍光灯や電球などにも、実はアルゴンガスが封入されています。水銀灯や真空管にも入っていますから、目には見えませんが確かに存在します。

医療の分野では、網膜疾患の進行を防ぐ治療の目的で、アルゴンガスが活用されています。アルゴンレーザーはアルゴンガスを用いる気体レーザーの一種で、水には吸収されにくく血液に吸収されやすい性質が治療に役立てられているわけです。

一方ではアーク溶接の際に保護ガスとしても活用されており、化学分析の分野やテクニカルダイビングのドライスーツにも用いられています。

考古学などの分野では年代の正確な測定が不可欠ですが、岩石の年代を測定する用途にアルゴンガスが使われます。岩石が最後に加熱されてどれだけの年月が経過したか、アルゴンガスを用いることでより正確に年代を推定することができます。

身近な用途としては、複層のガラスに充填するガスとしての用途があります。アルゴンガスには熱伝導性が低いという性質があり、これが窓ガラスの断熱用途に適しているのが理由です。

ガラスを複数重ね合わせるだけでは獲得できる断熱性は限られますが、中間層を設けてそこにアルゴンガスを充填することで、優れた断熱性が得られます。

窒素も安定した物質で酸化防止用途に使われていますが、アルゴンガスはあらゆる元素と化合せず、化学的な安定性の高さが強みとなっています。

純度の高いアルゴンガスは無味無臭で色もありませんが、空気中に含まれているのは1%未満なので、それなりに希少ではあります。

色がないので視認できませんが、高圧電場下では紫色を発するので、アルゴンガスの存在を確認することができます。

一般的に使用する機会はまずないものの、溶接などの分野では活用されているので、市販自体はされています。

安定性が高いガスで安全に取り扱えることから、酸素やガスを取り扱い販売しているお店で購入可能です。ただし、販売はボンベでとても重量がありますから、個人が気軽に買うものではありません。

空気を-200℃くらいまで冷やして分離するなどして生産されるので、一般的には作るのも至難の業ですが、しかし製造方法は確立されているので安定的に生産、供給が行われています。

 

アルゴンガスの様々な用途

アルゴンガスは、地球の大気中に3番目に多い気体になり、貴ガス(希ガス)の一種になります。ほかの物質と反応をおこすことがないのでギリシャ語の語源の「なまけもの」という意味があります。無色無臭という特徴があり、さまざまな用途に使用されています。

複層ガラスサッシの中間層や、真空管等の封入ガス・蛍光管・電球・水銀灯・アーク溶接時の保護ガスなどに使用されている物質になります。また半導体や鉄鋼において酸素と反応しないようにするためになどにも使用されています。空気中に含まれているアルゴンガスは、空気から液体酸素・液体窒素を分離精製するときに、酸素から分留ししれ得ることができます。
貴ガス(希ガス)の最大の特徴は、安定をしている電子配置になるので、反応性が極めて低い不活性ガスになります。不活性ガスは酸化反応などの化学反応を促すことを抑制させることができます。
精製されたアルゴンガスは、天然に多く存在するものになるのでコストがかからないといったメリットがあるので、不活性ガスとして多く利用されています。

断熱性が高い複層ガラス

アルゴンは空気よりも熱の伝導率が低いことからガラスに使用されることが多いです。ガラスとガラスの間にアルゴンを入れることで、より効果的な断熱作用を発揮します。断熱性が高い複層ガラスにアルゴンを使うことで、複層ガラスサッシの中間層に厚みが出るようになります。
複層ガラスとは、通常の窓ガラスと比較すると1枚以上のガラスでできているものを指します。複層ガラスは、厚みがあるほど断熱効果が高くなるといった特徴があり、そのことから熱を遮断することがでるので、断熱性が高かくなります。

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断熱性が高くなることで、ガラスに結露などが発生しにくくなり、カビやダニを抑制させることができます。複層ガラスは外気温と室内温のクッション的な役割を担うので、温度差による結露を防ぐことができるのです。

結露だけではなく、防音効果も期待することができ、外部に音がもれにくくなるので生活音など気にせずに快適に暮らすことが可能になります。寒い地域に住んでいる方など室内の暖かい空気を逃がさないように、通常のガラスを使用するのではなく、アルゴン入りの複層ガラスを使っている方が多いです。

蛍光管や低エネルギー電球

蛍光管や低エネルギー電球などにもアルゴンは使用されています。蛍光灯には微量の水銀とアルゴンが含まれていて、アルゴンはフィラメントの放電を補助する働きがあり、フィラメントの寿命を長くさせることができます。

ワインの封入ガス

驚きですが食品にもアルゴンは使われていて、ワインの封入ガスの役割があり、酸化を防ぐ働きがあります。また空気よりも比重が重いアルゴンを使用することで、ワインの瓶から酸素を効率的に流すことが可能になります。

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窒素ガスの場合には、空気よりもわずかに軽い性質があるので、ワイン瓶に窒素ガスを注入しても、蓋を閉めないで放置していると空気よりも軽い窒素ガスが瓶中で拡散してしまって放出してしまいます。こうなることで、重たい酸ガスが瓶内に拡散することになり、もとの酸素濃度に戻ってしまうことになります。

特に高価なワインなどは味にこだわりがあるので、酸化や劣化をさせたくない場合にアルゴンが好まれて使われています。

アルミニウムやステンレス鋼のアーク溶接

アルミニウムやステンレス鋼の溶接時にも使用され、溶接の表面をアルゴンでシールドすることで、酸化や窒化を防ぐ働きや、表面の見た目を美しくする効果があります。

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アーク溶接のシールドでは、炭酸ガスも使われることが多いのですが、アルゴンはより高品位な溶接加工用に使用されています。

アルゴンの溶接のひとつに酸素が微量含んでいるアルゴンシールドがあります。アルゴンシールドは、自動車の薄板溶接で使われています。

シリコンウェーハーの製造

シリコンウェーハーの製造にも使用されていて、超高純度も単結晶シリコンを製造する際に雰囲気ガスとしてアルゴンは使われています。アルゴンの不活性な雰囲気の中で、非常に品質が高いシリコンウェーハーを製造することができます。

半導体の製造

半導体の製造では、スパッタリング用のガスとしてアルゴンが使われています。

製鉄

製鉄では、取鍋への吹き込みやイオウなどの不純物を除去するためにアルゴンが真空脱ガスとして使用されていたり、銅の連続鋳造工程中に溶かした銅の表面を大気に触れないようにするためにシールドガスとして、溶銅の酸化や窒化防止にも使われています。

アルゴンガスの危険性

アルゴンガスは、危険性を伴うガスなのか気になる点ですが、空気中に含まれている物質になるので、危険性が低いといえます。アルゴンは不活性ガスになるので、通常の環境下で他のものと反応することや、火災に繋がることもないといった特徴がありますが、高濃度で吸入する場合には、人体に悪影響を及ぼすリスクが高くなるので、取り扱いは十分に注意する必要があります。

アルゴンガスは、性質上さまざまな用途に使用することができるので、多くの産業で使用されており、我々の身近な製品にも使われている物質になります。

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